安全保障概念の再整理:国土/エネルギー安全保障のための「競争」と「レジリエンス」

安全保障=生存必須財(エネルギーを始めとする各種資源。食糧、水、医薬品なども入るが希少性や偏在性の観点からエネルギーに特に注目することとする)の安定供給+領土内安全維持(軍事力による外敵抑止・警察力による治安維持)、と定義できるだろう。前…

平和論再構築 Vital GoodsとDiplomatic Capability

Vital Goods、即ち国家共同体にとって必須不可欠な戦略的資源を国際政治における交渉武器、カードゲームの手札と捉えるならば、それをいかに使いこなすかという部分が外交力(Diplomatic Capability: DC)ということになる。平和とは、敵対勢力に対する抑止…

パワーの源泉:Civil VT / Military VT

相手が求めるものを提供できる時、パワーが生じる。相手がそれを強く求めるほど、また、その提供者の代替が少ないほどパワーは強力になる。国際政治において国家が求めるのは経済的繁栄と安全保障であり、これらは車の両輪としていずれも欠くことができない…

NSV地政学:改 - FEWS地政学論

NSVとは、 N: Nervous system S: Skeltal system V: Vascular system である。地球上のインフラストラクチャーをこのように区分するのはDr. Parag Khannaである。 www.paragkhanna.com Nervousは神経即ち通信インフラ(インターネットケーブル、データセンタ…

Peace = Deterrence × Resilience

平和の条件については本ブログでも過去色々書き連ねてきたのだけど、再度整理すると、「抑止力」と「レジリエンス」の両輪なのではないか、と思う。抑止力とは敵の先制攻撃やそれに準じる挑発行為を思い留まらせるような、こちら側の軍事力・反撃力であり、…

地経学時代の戦略ツール:Engineering Vessel

必須戦略資源という文脈において、資源の確保や外交レバレッジの発揮のためは、単なる投融資ではなくVital Technology: VTの供与が重要であるというのが本ブログでの一貫した仮説である。ではVTの提供が具体的にどのようになされるのか、という点を考えてみ…

幸福のトライアド

自分が幸福であるとはどんな状態か、というのを三要素(トライアド)で考えてみた。 美意識の確立:「何が好きか」「何を美しいと思うか」これは自分が自分であること、外部要因に一切左右されない究極の自己表現だと思う。他人と関わる時の自分自身、他者と…

Oil Security:同盟国原油生産力指標

かねてから私はエネルギー安保指標の「自主開発比率」というKPIに若干の違和感を覚えてきた。これについては以前記事にしているが、改めて振り返ると、その違和感の理由は: 戦争のような有事での安定供給を見据えるなら、生産国の政治的友好度や産地からの…

ライフワーク - 真善美の交差点 - 2

前回、「美」の要素を「フロンティア・ロマン」という形で定義して、「海」に結びつけたわけだけども、海だけなのか、海がなぜ特別なのかというところがイマイチ腹落ちしなかった。もっとざっくりいってしまうと自然のダイナミズムそのもの、例えば海が蒸発…

ライフワーク - 真善美の交差点

真善美というのはキリスト教の話だっただろうか。詳しくは知らないのだけど、フレームとしては綺麗だと思うし使える気がしているので、これを何かと拠り所にして考える癖がある。 ライフワークというのを定めたいと常々考えていて、ここ10年くらいはその模索…

「海の資源」とGeopolitical Stability

私の考える地政学とは: 国家は生存財(食糧医療・エネルギー・水・国防防災の各種資源と、それらを利用可能ならしめるテクノロジー)の安定確保を巡って競争する。 生存財の絶対量不足や思想価値観の相克等により競争度合いは激化しうる。この状況では、生…

経済安全保障と油田権益

経済安全保障というワードが最近ホットである。経済的手段を用いて政治的目的を達成すること(=エコノミック・ステートクラフト)も、この経済安保という概念に包摂されるのかもしれない。私は本ブログにおいてFEWS地政学、即ち国家共同体の存続に必須不可…

趣味の整理:「海洋史観」×「キャンプ」×「乗り物」

「趣味はなんですか」という問いは気軽さを装っていて実はかなりの難物である。というのも、趣味というのはその人の美意識を表し場合によってはアイデンティティをも構成するところ、それについて向き合うことは仕事と同様かあるいはそれ以上に重要であると…

Tier1-3再構成(FEWS地政学論補記2)

主体の違いと行動内容を基礎に再分類しようと思う。 Tier1: VT保持主体たる企業による国際競争戦略 Tier2: 国家によるVRの管理と、VT育成政策(関税や産業保護政策等)。 Tier3: 国家によるVG (VT/VR)の交換戦略。いわゆる外交交渉。 軍事分野で考えると、Ti…

VTの4要素(FEWS地政学論補記)

Vital Technology、すなわちFEWS生産に関連する各種テクノロジーであるが、VTももっと深掘りして分析できると思った。 VT = (Transportation + Energy + Communication )× Integration といったところだろうか。輸送、エネルギー、通信というのは現代の機械…

FEWS地政学論

以前、「戦略資源と安全保障」というエントリーでは、安全保障問題を三つのレイヤーで考えた。生存財=必須資源=FEWSの分布と、その取引、そして危機管理である。 今回は、このフレームに少し変化を加えたいと思う。 Tier1: VG(FEWS+T)分布。これは以前と…

戦略資源と安全保障

戦争の問題(安全保障)を考える際には、いろいろなレイヤーの話がごちゃ混ぜになって混乱することがある。いわゆるミスコミュニケーションによる事故の話なのか、戦略策定のミスなのか、はたまた構造的に「詰む」ことによるほとんど不可避的な破局なのか。…

平和の条件

大国間の平和共存条件について考えてみた。 対話/外交:互いの利益に関する明確な相互理解。シグナリング。相互抑止のエスカレーションが慎重に管理される状態。 軍事力による相互抑止:相互が相手を強烈に害する能力を持ち、かつ、先制された側は反撃力を維…

石油の平和

「明日はもっと豊かになる」という感覚が共有されている時、平和になるのだと思う。現状に満足しているのだからわざわざ好戦的な態度をとる動機がないし、仮にそう言った闘争に陥った場合に失うもの(明日の繁栄)が大きいからである。動機もなければコスト…

EROIと戦争

戦争はなぜ起きるのか。戦争そのものの合理性と、政策決定の合理性という二つに分けて考えるとわかりやすいとふと思った。前者は政治的決断として戦争をするのが正しいかどうか、後者は政治的に正しいと思われた事柄を実際に実行に移せるか、という視点であ…

左脳と右脳の自省録

名誉、承認欲求、善の意識、貢献意欲等々を司る左脳的領域と、好奇心、趣味、愛や美意識を司る右脳的領域。一言に内面といっても大まかにこの二つがあって、しかも時に鋭く対立するので丁寧に紐解いていかないと自省は完成しない。 「善く生きるとは」シリー…

鎮魂と統制と救済

クリストファー・ボーム『モラルの起源』(白揚社、2015年)が非常に面白くて感ずるところ大なりだったので書くことにした。 現代の人間の道徳観は石器時代にチームで大型動物を狩るようになってから形成されたという仮説。共同体に危害を及ぼすエゴイスティ…

救済と鎮魂

プラトン、アリストテレス、エピクロス、エピクテトス、マルクスアウレリウスあたりの系譜を齧って「アタラクシア」すなわち不動心こそ幸福であり善であると考えてきたが、その中で、利他すなわち他者の幸福にどう貢献するかというのが大きなテーマになって…

善く生きるとは 9

アリストテレスの『ニコマコス倫理学』を齧ったので、そこら辺を踏まえてまた考えた。 快楽はある一定水準までは自然的であり善いが、それを越してくると依存傾向が出て悪になる。だから魂の陶冶によって欲望を統制し、自然的水準で満足できるようにすべきで…

善く生きるとは 8

「善く生きること」を「幸福」と定義するとして、「善く生きるとは」何かをずっと考えている訳だけど、究極的には言葉の定義問題に帰着するのでは、という感じがしてきた。 「善」の中身が全く不明な状態であることを明示するべく、「善」をあえてXと呼ぶこ…

善く生きるとは 7

ここ一ヶ月くらい善く生きる事について徹底的に考える中でわかったことがある。善の理論の「正誤」判定は結局のところ「私」の直感に頼るほかない、ということである。トロリー問題じゃないが、どんな理論も、ある特定のシチュエーションにおいてその理論が…

善く生きるとは 6

「誰も不幸にしない」を徹底しようとこの一週間過ごしてみたが、発狂しそうである。どう考えても普通に生きているだけで誰かを害しているし、まして石油開発などというビッグ・ビジネスに関与すれば否応無しに誰かの機嫌を損なっているだろう。 そこで少し戒…

善く生きるとは 5

「誰かを幸せにする」は分かりやすいが、「誰も不幸にしない」を徹底的に考えると行き詰まる。こうして快適な家に住みWifiを利用しながらパソコンを打っている時点で、大量の化石燃料エネルギーを消費しているし、このデバイス製造過程を通じてアフリカの児…

パイを増やすのは善いのか

物質的快楽の究極的源泉は石油に代表される一次エネルギーだと思う。エネルギーの化身として財やサービスが存在し、人々の幸福を構成している。食事も教育も医療も娯楽も安全安心(インフラや軍事力)も全てエネルギーの化身である。 農耕社会成立以来の歴史…

善く生きるとは 4

自分の幸福と他人の幸福を目指す、要は「みんな幸せに」生きる世界を究極の理想としてそれに向かう線路を歩むような生き方、が善い生き方なのだと思うのだが、先日来掲げている「誰も不幸にしない」について、何故そうなのか、を考えてみた。 悪人は幸福にな…