五能線の絶景と歴史浪漫を味わう〜鰺ヶ沢・深浦・十二湖〜

 僕の実家にはJR東日本のカレンダーがいつも掛かっていた。各所の路線と絶景を題材にして、季節感ある美しい写真が載っているのだった。その中の一つには、日本とは思えない猛々しい岩と真っ青な海、そして海岸沿いに続く線路という、異国感もありながらどこかノスタルジックな情景があるのだった。五能線という路線だった。この夏、昔から気になっていたこの景色を見に青森は弘前・深浦・十二湖(白神山地)まで行ってきた。

 

 旅は二泊三日。初日は新青森弘前で過ごし、宿は手軽に弘前駅前の東横イン五能線は二日目にたっぷり乗ることとした。「リゾートしらかみ」という特急列車があるのだが、あえてこれに乗らず、3両編成の鈍行で行ってみることに。ちなみに「五能線フリーパス」という、二日間乗り放題の切符を購入した。 弘前6:46発の電車に乗ったのだが、このあとだと10時台、次が確か夕方で、行き先で観光しようと思うと早朝のこれしかないという状況。鈍行で行く方は本数が非常に少ないので計画的に行動しましょう。f:id:Schoolboy:20180716214446j:plain

 

 車両は古い。電車マニアではないのであれこれ語ることはできないが、基本的な部分だけさらっと。車内はボックス席をメインに構成され、車両後方部にトイレがある。和式で、ペダルを踏むと何やら薬品が混ざったような青色の水が流れる。ずーっと流れ続けるのでおかしいなと思ったが、水を止めるにはもう一度ペダルを踏むらしい。

 

 弘前を出た五能線は途中でスイッチバックを経て、左手に岩木山を臨みながら、のどかな果樹園・田園地帯を疾走し日本海を目指す。 f:id:Schoolboy:20180716220159p:plain

出典:JR東日本路線図

 西を上にしているので少々わかりにくいかもしれないが、こちらが路線図。右端が津軽半島、左上には男鹿半島が位置している。今回は弘前を起点に反時計回りに進んで行くイメージ。鰺ヶ沢に出ると、緑一色の景色が鮮やかな青に変わり、日本海が出迎えてくれる。(あじがさわ、というのが最初読めなくて困った。。「鯵」は漢検準一級だそうです。)

 二日目は五能線の景色と並んで、世界遺産白神山地の「青池」を見に行くことにしていたので、十二湖駅まで進んだ。その間に拝める絶景は以下の通り。

f:id:Schoolboy:20180716221245j:plain

f:id:Schoolboy:20180716213355j:plain

これなんて昔見たカレンダーの写真そのまんまな気がする。

f:id:Schoolboy:20180716221310j:plain

いやもう本当に美しい。鮮やかな空と深々とした海の紺。豊かな緑に荒々しい赤茶色。絵の才能があったならばここに居を構えて死ぬまで書いているのではないだろうか。

この日は実は昼から曇ってしまって、あとで出会った観光客の方は青空を見られなかったそうな。早起きは三文の得だった。

 

 ハプニングはその後に起こる。十二湖駅に着き下車しようとするも、なかなか扉が開かない。いや、ボタンを押すことくらい知っている。栃木生まれの僕は宇都宮線で幾度となく扉開閉ボタンを押してきた。が、今回は何度押しても反応がない。あれあれとしているうちに、ぐらっ。動き出してしまったのだった。そう、降りられなかった。どうやら後方車両は乗降不可で、先頭車両にいないと行けなかったらしい。東北では常識なんすか??

 次の停車は「岩舘」。もう秋田県だったりする。腐ってもしょうがないので、岩舘で降り、戻る列車を待つ1時間半ほどの間散歩することにした。雲を貫通する強烈な紫外線にHPを削られながらも、海岸沿いを何とは無しに歩く。地域の子供が担ぐ神輿とすれ違ったり、地元の海水浴場に行き着いたり。海の家があったので、冷えた缶ビールと名物らしき焼きいかを頬張る。最近インディアペールエールにはまっているけれども、こういう時はやっぱアサヒです。ガツンと来た。

 

 気を取り直して十二湖へ。十二湖駅からはバスが出ていて、15分も行けば白神山地の名所、青池周辺まで連れて行ってくれる。観光バスがたくさん来ておりなかなかの活気。

f:id:Schoolboy:20180716222352j:plain

f:id:Schoolboy:20180716222417j:plain

青い。確かに青い。が、何というか、半分、青い?ポスターではもっと青いのでどうしたものかという感じはしなくもないが、透明度はすごく高くて、湖底の木なんかが良く見える。ちなみに曇っていたからで、太陽が出ていると光の加減で凄く青いらしいです。

 

 その後、二日目の宿地である深浦町へ。

 

 その昔、北前船の風待ち湊として栄えたという由緒ある町。この町に来たのはたまたま良さげなペンションがあったからで、歴史も何も知らず、「見た感じ漁村だから見る所は何もないだろうなー」とか思っていたのは内緒。期待を300%上回る素敵な町でした。ごめんなさい。

 

 今回お世話になったのはペンション深浦さん。料理が凄まじいという評判は聞いておったが、想像通りというかそれ以上というか。豪華を極めるとはこのことである。グルメレポは下手なので写真で済ませます。ちなみに右上の鍋の中には牛肉が控えておる。もちろん白飯も食べ放題的な雰囲気で奥に鎮座している。他の宿泊客の方々と談笑しながら和気藹々と楽しく過ごす。こういうのもたまにはいいっすな〜。

お世話になりました。

ペンション深浦|青森県観光情報サイト アプティネット

f:id:Schoolboy:20180716223444j:plain

 ちなみに、ペンションは高台に位置していて、夕陽をみる絶景ポイントでもある。今回は残念ながら曇ってしまったので夕陽は拝めず。運が良ければサンセットディナーになること間違いなし。

 

f:id:Schoolboy:20180716224114j:plain

 翌朝早起きしてペンション前まで散歩。この弁天様も、何とも猛々しい姿である。海の巨大な力によって削られた岩礁の上にそびえ、古来より船乗り達を見守って来たのだ。この場所、ブラタモリ的視点で見ても面白い地形。褶曲が綺麗に見て取れる。

f:id:Schoolboy:20180716224425j:plain弁天様から視点を左にそらせば美しい日本海

 

 最終日。ほとんど帰るだけの日なのだが、午前中を使って深浦を探索。

f:id:Schoolboy:20180716224559j:plain 807年建立という円覚寺へ。深浦の歴史的・文化的価値を凝縮したような場所であり、歴史好きは是非とも立ち寄りたい。船絵馬や髷額は文化財・日本遺産にもなっているようだ。歴史を知るという意味において、この円覚寺と対をなすのが、寺より徒歩1分ほどにある「風待ち館」である。三分の一スケール模型を中心に、北前船について詳しく説明されており、手元の知識が少なくともあらかた理解できる。

f:id:Schoolboy:20180716225139j:plain

f:id:Schoolboy:20180716225156j:plain

 

とまあ、「ただ泊まるだけ」と思っていたこの深浦、想像を超えて面白い土地だった。今回の旅を通じて津軽や西廻り航路に興味が出て、風待ち館では本を買ってしまった。今まで世界史専門でやって来たのだけど、これをきっかけに日本史にも幅を広げられそうです。

 

f:id:Schoolboy:20180716225507j:plain

 

最後は疲れもあったのでこっちで。これはこれでやっぱいいです。

 

ということで、最高の夏の思い出。

次の旅先を迷っているなら、五能線・深浦、オススメです。