Tier1-3再構成(FEWS地政学論補記2)

主体の違いと行動内容を基礎に再分類しようと思う。

 

Tier1: VT保持主体たる企業による国際競争戦略

Tier2: 国家によるVRの管理と、VT育成政策(関税や産業保護政策等)。

Tier3: 国家によるVG (VT/VR)の交換戦略。いわゆる外交交渉。

 

軍事分野で考えると、Tier1は軍事産業の国際動向。軍事専業の会社は多くなくほとんどがdual useの民生分野を主たる領域としている。そういった企業の国際競争戦略の話。

Tier2は、まずVRでいうと、軍隊の維持管理(採用育成)、兵器システムへの投資、基地の整備等がVR管理に該当する。なお軍事テクノロジーを使いこなすintegration力は軍隊自体に宿るところ、一部VT育成とも重複する。加えて、軍事産業をいかに保護発展させるかという産業政策じみた発想もあるだろうから、こちらもVT育成政策ともかぶってくるが、こちらは経済主管庁との協働ということになるだろう。武器輸出といったテーマはTier3にも関連するが、VT育成政策と捉えることもできるだろう。

Tier3は言うまでもないが、自国の軍事アセット(:VG=VR/VT)をどう使って安全保障を達成するか、同盟が必要なら何のVGを提供するのか、といった取引ゲーム戦略である。

 

Tier2-3は完全に国家の地政学論理=FEWSをいかに安定確保するか、という国益ベースで発想されるが、面白いのは、最も肝要なVT(産業力・技術力)は基本的には経済競争の論理で動くということである。いくら国益を叫んでも、赤字が続けば経営は成り立たず技術は失われていく。Tier2による保護政策も適度には必要だが、こちらに頼りすぎてもゾンビ企業が量産されるだけになり兼ねない。世界水準のVTを維持しようと思えば、それは国際市場で勝つことと同義であり、基本的には産業界自身の努力が必要とされると個人的には思うところである。中国のハーウェイは間違いなく国家の支援を受けてはいるが、その経営者のバイタリティーと才気たるや、只者ではないだろう。結局のところ、こうしたハングリー・スピリットに裏打ちされた産業力こそが、国力の本質ではないか。