趣味の整理:「海洋史観」×「キャンプ」×「乗り物」

 「趣味はなんですか」という問いは気軽さを装っていて実はかなりの難物である。というのも、趣味というのはその人の美意識を表し場合によってはアイデンティティをも構成するところ、それについて向き合うことは仕事と同様かあるいはそれ以上に重要であると思われるからである。(どんなに特殊なものであれ)仕事は結局のところ分業作業の歯車であって「個性」は不要だが、趣味、自分の人生はそうはいかぬからである。私はそういうわけで自分の趣味というものを真剣に考察してしまうのだが、これがドツボにはまり、好きでもないことをやろうとしてみたり、好きなのに抑えてしまったりと、堂々巡りを繰り返すのであった。

 自分の興味や美意識を突き詰めたエッセンスを持ち、現実に即して実行可能・持続可能であることが必須であるが、あまりジェネラルにまとめ過ぎると発散しすぎて全て中途半端になってしまう。nature/craft/historyという三要素を5年ほど前から意識してきたが、これは少々概念的・ジェネラル過ぎると思う次第である。もう少し焦点を絞らねば、と考えていたところ、一つの暫定的結論を導き出した。

  • 海洋史観 × キャンプ × 乗り物

である。海洋史観、これはフェルナン・ブローデルが提唱するところの、海のレンズを通して陸を見つめる、海の役割を主軸に人類史を概観する歴史的立場であるが、これを主軸に据えてみたい。趣味に対置されるところの公共的な役割(要は、仕事、場合によってはボランティアとかも含むが)におけるライフテーマを「海とテクノロジー地政学」としてみたので、それに連動する形である。

 海洋史観といっても、何も洋上で起こることだけに注目するものではない。むしろ、陸で起こることを海と紐づけて理解する立場であるという意味で、その視線は海から陸へと注がれている。この視点は、近代世界システム論や、世界商品(コーヒー、茶、酒、石油等々)のグローバル・ヒストリーという理解と極めて親和性が高い。これこそが私の歴史に対する興味の本質である。(歴史好きといっても幅広いので、個性の表現という意味ではこのくらいの限定をかけないと何が好きなのかよくわからないのだ。経験上、相手に歴史好きですと言われて、話が本当に合うかは結構微妙なのである。私は戦国武将や偉人伝には興味が無いし・・)

 キャンプとは何か。ざっくり言えば野宿することである。その面白さの本質は何であろうか・・・私は小学生の頃にキャンプにどはまりして中学以降中断し、社会人になってから再燃したのだが、そのきっかけはエド・スタフォード氏のサバイバル動画であった。生存に最も重要な要素、すなわち食料、火、水、シェルター(これが地政学フレームで用いる「FEWS」の出発点)をいかに効率的に獲得していくか。文明に飼い馴らされた我々から失われてしまったそう言う動物的本能を活性化させる点にキャンプの面白さがあると思う(といっても、私はサバイバルキャンプなどできるスキルはないが・・)。

 乗り物。これはart of engineeringである。どんな乗り物も、進むことに最適化され洗練されたものは美しい。ロードバイクやヨット、自動車、飛行機はどれも美しいのである。男の子は乗り物が好きというステレオタイプがあるが、私には少なくとも当てはまる。しかし美しいものに男女もヘチマもあるまい。自転車好きの女子だって沢山いる。というわけで叶うものなら自転車から車、ヨットに飛行機まで全て所有して乗り回したいものだがそうは問屋が卸さない。今所有しているのはロードバイクだけであり、ヨットは是非乗ってみたいのだが所有するには至らないだろう。帆船模型も作るので、それを眺めるのでも足りる。知り合いにサラリーマンをしながらアマチュアパイロットの免許を持つツワモノがいるが、そこまでする気は今の所ない。。それならヨットをもう少し極めたいものだ。

 以上、海洋史観・キャンプ・乗り物という三要素で趣味を整理してみたが、これらはベン図の如く、全て重なる領域から全く重ならない領域まで様々である。単純計算で7通りのバリエーションがあるだろう。

  1. 海洋史単体:部屋で海洋史に関する読書
  2. キャンプ単体:近所の公園でソロキャンプ。
  3. 乗り物単体:河川敷をサイクリング
  4. 海洋史観×キャンプ:海岸でキャンプ。
  5. 海洋史観×乗り物:セーリングカヤック/海岸沿いのサイクリング。
  6. キャンプ×乗り物:キャンプ道具積んでオートキャンプ
  7. 海洋史観×キャンプ×乗り物:カヤックにキャンプ道具積んで島キャンプ

とまあ、なんかここまで分析的に書くと変な気がするけど、こんな分類になるだろうな。

今の自分に欠けているのはマリンスポーツの要素であるので、早いとこヨットやカヤックを守備範囲に加えたいものである。