ライフワーク - 真善美の交差点 - 2

 前回、「美」の要素を「フロンティア・ロマン」という形で定義して、「海」に結びつけたわけだけども、海だけなのか、海がなぜ特別なのかというところがイマイチ腹落ちしなかった。もっとざっくりいってしまうと自然のダイナミズムそのもの、例えば海が蒸発して雲になって風に流されて山にぶつかり雨となり川となり森や作物や動物を育みまた海に帰る、といった循環に、ある種の美学を感じるのではないか。あるいは森の遷移(海の生態系でも良い)に見られるような、一定のバランスを保とうとするメカニズムに、ある種の美しさがあるのではないか。中庸・節制・ホメオスタシスアリストテレスも正義の要素として節制をあげたわけだが、古代哲学においては常に幾何学的感覚が美意識そして善の意識の根底にあったと思われるけれども、幾何学的バランスというのは要するに自然のバランス(物体の重心を捉えるであるとか、黄金比とか)こそが究極の美ということではなかったか。

 そうやって美を定義し直すならば、私のライフワークとは(必ずしも海的なものに限定する必要はなく)、広くエネルギー・セキュリティといった具合に定めることができそうである。当面の間は石油開発という世界になるだろうが、エコロジー経済学が示唆するところのポスト・オイル時代、来るべきそれに適応したエネルギー・セキュリティの姿といったものを模索することも、ライフ・ワークの一環になると思われる。