2017-01-01から1年間の記事一覧

アラブvsユダヤの終わり

www3.nhk.or.jp イスラエルとアラブは因縁の仲、と言うことで我々は長らく学校で教わってきたわけだが、イスラエルの第一の敵はイランで、これは多分昔からそう。パレスチナとの戦いはあるかもしれんが、イスラエルが圧倒的優位であって、必ずしも「脅威」で…

沸騰するルブアルハリ

サウジアラビアが超ホットである。外部要因としてイエメンからのミサイル攻撃と撃墜、レバノンによる宣戦布告(とサウジが勝手に言っているもの)、内部要因としては王族ら超有力者の急激な粛清、そしてウラン濃縮ニュースまで飛び出している。ぬるま湯に浸…

データは新しい石油か

IT時代、いやビッグデータ時代、基いAI時代において、データは21世紀の石油だと言われる。データが重要でかつ金を生むのは肌感覚で十分理解できるが、果たして石油に相当するものなのか、というのは、まだ整理がついていない。 www.economist.com 20世紀の石…

学生的思考回路における企業の「すごさ」

たまたま就活学生と話す機会があった。誰だって「すごい」「かっこいい」企業に行きたいわけだが、「すごさ」とは何なのか。売り上げが大きいと「すごい」のか。数千億円投資している会社は「すごい」のか。思うに、「すごさ」は戦略優位があるかどうかに尽…

蘇るヒジャーズ:アラブーイスラエル鉄道計画

こんなニュースが飛び込んできた。 www.nikkei.com 「地経学」ど真ん中の、非常に刺激的なニュースである。イランの台頭が明らかになりつつある今、イスラエルは敵を一つに絞りつつある。毛沢東が言ったように、二正面作戦は敗北の布石であり、戦力の集中こ…

サウジアラビア:庇護者はアメリカから中国へ

経済戦後レジームはドルと石油に彩られた。ドルの中心はアメリカだが、石油の中心は中東、とりわけサウジアラビアであった。サウジのガワール油田は日量500万バレルを吐き出すが、これは地球全体の生産量の5%強を占めるという尋常ならざる規模である。サウ…

現場主義と忖度がもたらす貧弱なマネジメント体質

よく日本型組織は現場は優秀だがマネジメントシステムの構築や戦略性が欠けていると言われる。半世紀前の敗戦も同様の文脈で説明することができる、という本もある。僕は日本企業にいるが、訳あって日本人はマイノリティという特殊な環境で数ヶ月働く機会が…

エネルギー安保再考 〜「権益主義」批判〜

エネルギー自給率が100%以上の国は、エネルギー安保など考えなくて良い。自給率が下がるほど、また一人当たりエネルギー消費量が多いほど、その重要性は高まってくる。日本ほどこの重要性が際立つ国もそう多くあるまい。 経産省の方針はかなりリアリステ…

Fire is not dead. 『パリ協定で動き出す 再エネ大再編』井熊均・瀧口信一郎 日刊工業新聞社

エネルギー三大市場としてのEU、中国、アメリカは「ファイアー&ウィンド」すなわち石炭・天然ガスによる火力発電を中軸としつつ、2〜3割程度風力を中心とする再エネが占める、という構図が一般的になるだろう、という。技術的制約から再エネ一本になること…

シンガポールとイスラエル

繰り返すようだが、僕はイスラエルに格別興味を持っている。学生時代にみたイスラエルは、僕が考える「国力」や「国家の戦略」といった見方のバックボーンを形成している。社会人になってからは、半年弱シンガポールに滞在する機会があって、植民地支配の残…

モーゲンソーの国力

国力については色々な分析があるが、モーゲンソーの分類が包括的(その文量が多いが)だと思っている。 地理・天然資源・工業力・軍備・人口・国民性・国民士気・外交の質・政府の質の9つが国力の要素という。 ちょっとまとまりがないので、勝手に分類する…

『現代日本の地政学 13のリスクと地経学の時代』日本再建イニシアティブ 中公新書

いわゆる日本の政治学エスタブリッシュメント(なのかはわからないが)が、真剣に地経学の話を議論している。そして我らがパラグ・カンナの本も引用されるなど、最近のマイブームを凝縮してくれたような本。当然面白い。 地経学の重要性とかは自分は結構わか…

中東狂騒曲

僕はイスラエルとパレスチナに1ヶ月弱ほど滞在したことがあって、中東には今でも興味がある。政治学徒として、露骨な「パワーゲーム」が展開される中東は、「歴史」が常に生き生きと動いていて、知的好奇心をくすぐるのだ。 ただし、そこで起きていることは…

古典的冒険譚と植民地主義

大げさなタイトルですが、今回のテーマはゲームです。テレビゲーム。 好きなゲームを三つあげろと言われたら、ゼルダとメタルギアとアンチャーテッドをあげます。今回は最後のアンチャーテッドのお話。 アメリカのnaughty dogというスタジオが作っているゲー…

『TPP亡国論』中野剛志

中野さんの本は『グローバリズム その先の悲劇に備えよ』に続いて。TPPについては学生時代、北京大・ソウル大・復旦大・台湾大と東大で議論する機会があったんだけど、「まー推進っしょ〜」みたいなノリで見ていた部分があったので、いざ振り返ってみると新…

『グローバリズム その先の悲劇に備えよ』中野剛志・柴山桂太(集英社新書)感想

掲題の本、読了しました。 『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』に引き続き、自由主義・グローバリズムって果たして今後も続くのか、そもそもグローバル化って良いことなのか、というお話。 戦後すぐに資本主義の黄金時代が来るが、これはGATT体制によると…

国家の論理と企業の論理Ⅱ 地経学時代、パワーとしての接続性

昨日のテーマの続き。 「中国の投資が増えている」「イギリスはやはり賢い」「日本はだからダメなんだ」と、国家を主語にするケースは多い。政府の動きを説明する時ならば違和感はないが、企業の投資動向、戦略動向を指すときもこういう言われ方をされるのは…

国家の論理と企業の論理

国家対市場というのはかなり面白いと思うテーマの一つだ。19世紀的帝国主義の時代なら、国家の利益と企業(産業資本、金融資本)の利益はほぼ同一で、だからこそセットになって植民地支配を拡大していった。そこでは国家の拡大(=軍隊展開と行政管理)はす…

ブログ名について

開設直後のためトライアルも兼ねてエントリ数多めで。 「空中楼閣」は現代文明をイメージしています。ラピュタのような感じです。それはある種の魔法によって宙に浮いている訳でですが、その魔法とは要は高密度エネルギーです。つまり、産業革命での石炭動力…

『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』感想

水野和夫著『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』集英社新書 2017年 掲題の書籍を昨日、読みました。フロンティアを開拓して成長することを前提としている資本主義は、開拓すべき空間を失った以上、もはや維持できない。民主主義国民国家は国民感の平等=福…

自己紹介

はじめまして。私は若手会社員で、資源エネルギー関連の業界にいます。 このブログでは自分の頭の整理と(願わくば)世の中への発信を目的として、興味関心に沿って日々の雑感の記述、書評、ニュースへのコメントをしたいと思います。関心のある分野は地理と…