平和論再構築 Vital GoodsとDiplomatic Capability

 Vital Goods、即ち国家共同体にとって必須不可欠な戦略的資源を国際政治における交渉武器、カードゲームの手札と捉えるならば、それをいかに使いこなすかという部分が外交力(Diplomatic Capability: DC)ということになる。平和とは、敵対勢力に対する抑止を効かせつつ、自国および友好国から必要資源を安全に獲得できる時に達成される。その実現にはVGとDCが共に必要になると思われる。

 

 DC = intelligence × foreign policy × diplomacy. 

内外の情報収集分析をベースに自国VGの対外活用方針を決定(foreign policy)、その実行というサイクルで構成されよう。

 

 私の関心はどちらかというとVGの中身の分析と、その獲得に向けた方法論であるので、本ブログではもっぱらVGの言及で占められているしそれは今後も変わらないと思う。ただし、全体像を再度俯瞰するためにDCについて敢えて言及した。

 

再度VGをまとめると:

 

VG = Military VG + Civil VG.

 Military VG = Base + Equipment + Operation

 Civil VG = FEWS + NSV

 

なおMilitary VGのうちBaseはVR、OperationはVT、EquipmentはVRとVTのミックスである。

 

 

1. 米中対立を基軸とするグローバルスケールで眺めれば、米国圏が中華圏に十分な抑止を効かせつつ、米国圏内での必須資源自給が期待される。前者は問題ないにしても後者、特に原油供給は心配である。未来は全く読めないが、アメリカ大陸の原油増産(シェールというより、中南米の大陸棚)に期待を寄せるところである。

2. 日本に焦点を絞れば、上記において米国圏の平和が達成される前提で、日本に必要資源を獲得できるか、が問題となる。資源供給量が豊富であればカネで購入できるが、供給に不足が生じればVGによる交換しかない。米国圏の友好国に対して効力を持つVGを持っておく必要がある。我が国の歴史的制約から、例えばイスラエルのように思い切ってMilitary VT大国となることは非現実的である。Civil VTのうち海外(米国圏内友好国)に展開できるものを見定めて育てる必要があるだろう。

3. 最後に、1及び2が失敗に終わった時のことを考えると、頼れるのは自国だけである。ソ連崩壊時のカオスでも、ロシア人は意外に素朴に生き抜いたと言われるが、ダーチャと呼ばれる自給的食糧生産システムによるところが大きいとする指摘もある。いざとなれば自力で耕して食う、この姿勢が最後のセーフティネットかもしれない。

 

このようにDCとVGを俯瞰的総合的に考えた大戦略のことを、平和戦略 Peace Strategy (PS) と呼べるかもしれない。

 

PS = VG × DC

 

私はVG、特にNSV分野の事業展開、経営、産業政策、地経学を主軸としたPeace Strategyの立案実行をライフテーマとしたい。