パワーの源泉:Civil VT / Military VT

 相手が求めるものを提供できる時、パワーが生じる。相手がそれを強く求めるほど、また、その提供者の代替が少ないほどパワーは強力になる。国際政治において国家が求めるのは経済的繁栄と安全保障であり、これらは車の両輪としていずれも欠くことができない。

 経済的繁栄を可能ならしめるもののうち、死活的色彩を持ち、よって国際政治におけるパワーに転換しやすいものがCivil VTであり、一つ前の記事で書いたようにNervous, Skeltal, Vascularの各インフラの構築運営技術・ノウハウに相当する。そしてそれらを物理的パワーで保護するのが軍事力であり、それはMilitary VTと呼ぶことができよう。軍事力の生産技術、生産基盤、運用ノウハウ(軍隊が保有する)の総体系がここでいうMilitary VTである。Civil VT / Military VTを保持するものこそが国際政治において同盟の獲得や敵国への抑止を効果的に実施できる。

 ところでCivil VTには通貨や金融システムは入らないのだろうか。アメリカはドルシステムからの締め出し(金融制裁)を行ったり脅しをかけることで相手国の行動変容を迫ることをしばしば行う。確かにドルがパワーの源泉であるようにも見えるが、そもそもドルが世界に浸透したのは、戦後アメリカのCivil VT(特に通信、エネルギー)とMilitary VT(言うまでもないが軍事力)が世界を文字通り圧倒し包み込んだことの結果ではないか、そう考えるならば、ドルはCivil / Military VTが生み出したパワーの権化、であると言えるかもしれない。

 同盟を獲得維持するには、相手が死活的に望むもの、即ち経済的繁栄の基礎(Civil VT)と安全保障の手段(Military VT)を提供することが、枢要であるといえよう。