The party in the high castle

Energy Return on Investment (EROI)の減少、即ちエネルギー余剰の低減による文明崩壊論を基調モチーフとしつつ、地理、歴史、技術、制度、思想などについて考えます。

フェルナン・ブローデル『地中海』

『地中海』を買ってしまった。最初の一巻だけで、まだ読み始めたばかり。だがこれがアカデミズムの一派を作り上げた記念碑的作品なのか、と思うほどの滑らかさ、饒舌さ、情景の豊かさがある。僕が好きな作家・ジャーナリスト、例えば元Atlantic誌のカプランや、度々言及しているパラグ=カンナといった人たちの語り口に近いものがある。いや、彼らこそがアナール学派の総帥にして20世紀最大の歴史家とも言われるブローデルに倣っているのやもしれない。そういえば、カプランの『地政学の逆襲』には、ブローデルの名前が言及されていた。

 大げさに言えば、紀行文のような軽妙さだろうか。古代ギリシアの偉大な歴史家にして冒険家でもあるヘロドトスが書いた『歴史』にも似た雰囲気があったような。いずれも地誌や文化・習俗への考察を豊富に含み、技術、社会制度、政治体制へと駒を進めていく。ブローデルの提示する枠組みもまさにこれと同様だ。ウェストファリア以降の国民国家制度が常識となる中で、歴史といえば専ら政治・外交史に独占されてきたが、国民国家意識が希薄だった中世、あるいはもっと原始的な古代においては、ブローデル的な歴史観がむしろ一般的だったのかもしれない。もっとも欧州中世はキリスト教の存在感が大きすぎるから少し違うかもしれないが。

 この地域にはエキゾチックで不思議な魅力がある。例えばシロッコ、ギブリ、ミストラル。このオシャレな横文字はいずれも地中海周辺の季節風だが、そのオシャレさゆえにクルマの名前にもなっている。フォルクスワーゲンのホットなハッチバックシロッコだし、セクシーなマセラティ「ギブリ」も然りだ。スタジオ「ジブリ」はイタリア空軍の偵察機の名前から取られたのは有名な逸話だが、この偵察機の名は「ギブリ」で、やはり風の名前なのだ。

 あー旅がしたい。