相対化で見えてくる「価値」

ふと思った。「価値」や「強み」って何だろうか。絶対的なものだろうか。答えはノーで、相対化して初めて価値だったり強弱が見えますね、というごく当たり前の話。

 以前スキルの三階層という記事を書いたが、例えばTier3の仕事をしながら、そのレイヤーの人とスキルを競い合ったとする。圧倒的な専門性(弁護士とか)があるなら別だが、大抵はだいたい同じ水準だろう。そうなると、自分はTier2も知ってるんだぞ、というのが強みになってくる。例えば会計も契約法務もそれなりにわかる、けど自分は戦略策定に関わったし、マネジメントシステムや組織デザインも経験したぞ、と。同様に、Tier2の仕事をそういうレベルの人々(管理職、経営層)とすると、彼らはTier2経験が自分より豊富だし、「僕の強みって何だっけ」となってくる。すると、大抵はTier3にすがることになる。例えばマネジメントシステム構築を一緒にやってるあの技術担当部長は元プロジェクトエンジニアだから技術やプロジェクトマネジメントのことをよーく理解してるけど、おれはどうだろう、何の知識や経験を持ってものを語っているのだろう、となる。そこで管理会計や契約法務やプロジェクトファイナンスなんかの経験があると、それを拠り所にできるよね、と。契約を通じて事業を理解してますよ、工学はわからなくても、当社が負っているリスクは須らく把握してますよ、となれば、相手が元技術屋で契約に疎いとくれば、そりゃ強い。価値がある。

 まあ詰まることろ自分の価値というのは分野ごとに絞りをかけていくことで生まれてくるのものだなーと思う。絞りをかける回数が少ないほど活動領域は拾いが倍率が高い。分かりやすい例がスポーツだ。それもシンプルな動きのスポーツ、100M走やボクシングなんかが良い。早く走れる、ただそれだけで価値を出そうと思ったらそりゃ大変で、誰だって、僕だって小学校の頃は足が速かったけど、オリンピックに出ようだなんて夢にも思わないし叶わない。そういう一芸で食っていけるのは本当に天才で、毒を塗りたくられたイバラの道だ。だから絞りをかける。足が早くて、ボールも器用に捌ける、となるとサッカーも見えてくる。体格が良いならアメフトだって良い。こんな具合。誰かが言ってたけど、上位10%に入る素養を3段階で絞れば、1000人に一人の人材になれる、的なやつだ。契約やら会計やら技術やら、なんかプロジェクトに関わることが幅広くわかってる、戦略やら組織やらもわかってる、それでいてリーダーシップがある、ここまでくれば立派。特定の業界という絞りはかかっても、いつか経営人材としてやっていける、はず。

 こう見てくると、どの分野で絞りをかけるか、その見極めが大事なんじゃあないか、って気がしてくる。それこそアーティストやアスリートは5歳とかの時点で(親の意思かもしれんが)絞りをかけているわけで。そして、どう絞りをかけるかは、どう行きたいかという人生の大戦略に関わっていて。つまり内省を繰り返さないとこの方向は見えない。