ライフワーク - 真善美の交差点

真善美というのはキリスト教の話だっただろうか。詳しくは知らないのだけど、フレームとしては綺麗だと思うし使える気がしているので、これを何かと拠り所にして考える癖がある。

 ライフワークというのを定めたいと常々考えていて、ここ10年くらいはその模索に費やしてきたと言っても過言ではない。ライフワークとは、真善美全てを満たす必要がある。問題は、自分の中で真善美をどう定義するか、に尽きるわけだが・・・

 

真:Ergosophy。EROI文明論と言っても良い。社会経済政治、いや人類文明そのものをエネルギー余剰の生成消費プロセスと捉えて冷徹に世界を分析する。乗り越えられない物理的制約に光を当てる。

善:Geopolitics。経済発展と国家(共同体)間平和。FEWS+Tの話。必須資源を全ての共同体が安心して入手できるという心理状態にあるとき人類は平和を手にするだろうが、その供給途絶の恐怖が少しでも生まれれば、その帰結は流血である。流血を少しでも減らし、餓死者を減らし、傷病者が癒される、そういう状態を作るために貢献することが善である、と素朴に定義することにしよう。

美:Oceanography。未知の世界の神秘。宇宙や深海といった未踏のフロンティアにはロマンがある。また自然のメカニズム・ダイナミズムには美的感覚を刺激する要素があるだろう。海は地球スケールの気候・気象システムの根幹でもあり、水循環の始点にして終点、陸上の森林や土壌とも有機的に繋がっている。また古代より海は人間の神話的創作の中心的地位を占めてきた。natural beautyのいわば極致がoceanographyだと思う。

 

真善美は三つ揃って完成である。真だけだとニヒルに落ちかけてしまうし、善だけだと息苦しい。美だけだと夢想家で終わってしまう。

 

思えば学生時代から「ライフワーク」探しは始まっていて、就活はその第一歩だったわけである。当時Ergosophyの思想は全くなかったが、上記でいう善・美の感覚はあった。国防やエネルギー開発に興味があると同時に、フロンティア・ロマンに惹かれ海洋と宇宙の世界を色々見て回った。結果的に「海洋エネルギー開発」という世界に落ち着いて今に至るわけだが、この選択は我ながら絶妙だったと思う。

 

海底のメタンハイドレートレアアース、洋上風力など日本周辺の海洋資源開発も話題には尽きず、新発見を喜ぶニュースが出回る一方で、常に冷笑的なトーンも存在する。EROIの観点で見れば多くの資源は「資源」と呼ぶに堪えず、今のところ「夢想」に過ぎぬと。それは正しいかもしれないし、正しくないかもしれない。シェールオイルだって、大昔は夢物語と言われていたのだ。ロマンを楽しみながら、物理的限界をよく理解しつつ、世のため人のために着実な努力を積み上げることこそが、人生の「仕事」の喜びであろう。